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公開シンポジウム開催レポート①

①基調講演・市の取組・制度説明

”まちの資源である空き家について考えてみよう”をテーマに、2021年9月11日、「まちと空き家の学校」公開シンポジウムを開催しました。開催レポート①では、第1部、第2部の概要をご紹介します。

会場の「市民の森ふれあいホール・多目的ルーム」は感染症対策のため来場者数を定員の半数に絞り、オンライン参加とのハイブリッド方式で開催。会場、中継参加をあわせると120名以上の方にご参加をいただきました。

はじめに、主催者を代表して、大坪冬彦日野市長より挨拶申し上げました。

【第1部】

東京都立大学都市環境学部 饗庭伸先生から、「空き家=まちの資源」と題して基調講演をいただきました。

「本日ご参加の半分くらいの方は、空き家にネガティブなイメージを持っておられるかもしれない。そうではなく、ポジティブな、まちの資源としてとらえたらどうなるかというお話をします」。

(1)「日野市武蔵野台自治会で起きたこと」 

はじめに、実際に日野市の武蔵野台自治会で起きた、空き家をまちの資源としてとらえたまちづくりの紹介をします。武蔵野台自治会は、多摩丘陵部に1960年代に開発されたまちにあり、地域として高齢化も進みつつあり、空き家も増えていた。そこで「空き家をまちの資源としてとらえる」ための実験的な取り組みとして、市役所にも相談しつつ、熱心に活動しておられる自治会を中心に、どんなことができるか考えてみようと取り組みを開始。

最初に、ワークショップで「まちにほしいものはないか」未来のビジョンを語り合っていただいた。そして様々なアイディアが出たうちのひとつとして、「地域の図書館」を2週間、空き家で実験展開した。(*1)

実験的に図書館も作ってみて、空き家を使っていろいろできるかも、という雰囲気が自治会に生まれてきた。そこで次に、皆さんのアイディアを実際に空き家活用、実現したらどうなるか。家だけでなく、空きガレージ、庭、道。それらを街のなかでつなげていったら面白いのではないかという提案を大学からさせていただいた。

そのうえで、具体的な空き家活用プロジェクトとして、2階建ての古いアパートに着目した(*2)。大学の多い日野で、学生向けのアパートだったが、古くなり学生に貸すこともなく、放置されていた。
そこで、使っていないなら自治会に貸してもらえないかと、市役所に仲介いただきながら打診したところ、ご了解をいただけた!
(*1)(*2)は「空き家まちづくりガイドブック」に紹介があります

自治会で話し合ったところ、「広場がほしい」という意見が多数。そこで「使っていないなら壊してもらえないか」と打診したところ、ご了解いただき、所有者がアパートを撤去してくださった。

そしていよいよ広場づくりへ。市を頼らずに「自分たちで作っちゃおう!」と、自治会長さんから地域の土木整備が得意な人などにも声を掛け、また、住民も、市役所職員、学生も入って公園づくりをした。こうしてできた広場には、菜園としての利用に加え、防災庫を設置したり、マルシェをしたり、子どもの夏のイベントを開催したりなど、生き生きとした使い方がされている。

夏には子供向けイベントも実施。楽しそうに企画していたら、広場の奥にある空き家の所有者さんや、お向かいの家の方が、イベントの日は1Fのスペースやトイレ、ガレージなどを解放してくださった。「暗いから、映画館をやってみようか!」などの企画も生まれ、1か所拠点ができると、周りからどんどん資源が集まってくる。空き家をまちの資源として捉えると、資源が資源を呼ぶように連鎖していく。これを天岩戸(あまのいわと)効果と呼んでいる(こじあけても開かないが、楽しそうにやっていれば自然と相手が出てくる)。

<まとめ>=空き家活用のポイント=
〇想像力を膨らませることが大事:武蔵野台自治会では、最初にワークショップ等で地域の空き家活用について夢を膨らませた。
〇所有者と話をすることが大事:面白いこと一緒にやりましょうよ!のスタンスで!
〇自治会の力が大事:何かやるたびに自治会長が近所に回って説明をしてくれていた。まちの中にいる隠れた人材を探してくれた。
〇楽しくやることが大事(天岩戸効果):楽しそうにやっていると人が集まってくる。空き家単体だけでなく、それで地域がどう良くなっていくのかが大事

(2)まちはどう変わっていくのか

続いて饗庭先生から、空き家の活用によりまちはどう変わっていくのかというお話をいただきました。

先生のお話のポイントは….
・「日野市は空き家だらけだ!」という認識をお持ちかもしれないが、そんなことはなく、ゆっくりした新陳代謝の過程にある。(空き家ができる、空き家が買われるの繰り返し)
・人口減少と空き家増加には時間差がある(家族が住む→子供が出ていく→残った家族がいなくなる)。日野市は今、子供が巣立ち、夫婦のみ世帯が多い。
・今後は、日野市ができたときのようなダイナミックな変化はない。ゆっくり、小さく変化していく。
・そうした小さな変化にあわせて、「必要なもの」「まちを楽しくするもの」を埋め込んでいく。そのことで日野のまちを豊かに、まちの価値を落とさないことが大事ではないか。まちがよければ、相続のときや売るときにもちゃんとした値段で売れる。空き家を使ってまちの価値を落とさないということを考えていけたらよい。

以上のように饗庭先生から、日野市武蔵野台自治会を舞台とした、空き家をまちの資源としてとらえる具体的な展開事例のお話や、空き家活用がまちに与える影響について、ご紹介をいただきました。


【第2部】

「空き家対策の状況と活用事例」を、日野市まちづくり部都市計画課住宅政策係佐々木大斗主査より紹介しました。

 日野市資料(PDF)

①空き家対策の現状として、
・空き家数742棟(コンビニの約10倍):近隣市と比べて多い傾向ではなく、統計情報からは近隣市より少ないこと。
・戸建て空き家所有者のアンケート結果から、空き家となった理由は「居住者が亡くなった等」、困っていることとしては「放火や不法侵入」「定期的な管理ができない」「家財整理ができない」などであることが紹介されました。

②市の取り組みとして
・目標は、「空き家を増やさない」「管理されない空き家等をなくす」「地域の資源とする」の3点であること
・空き住宅等対策計画の5つの施策として、「所有者や地域等の意識啓発」「情報収取・蓄積・共有」「流通の促進」「多面的な活用の促進、適正管理」に取り組んでいることが紹介されました。

特に「流通の促進」については、市が物件流通の仲介役を担い、物件所有者は市役所に申請書を提出すれば、市が各業者と調整を行う仕組みがあります。所有者は、鍵を市に預ければ内覧会も立ち会い不要で、複数の業者が市に提示した見積額を所有者が知ることができるという、日野市独自の仕組みです。今まで、値が付かなかった物件はないという実績もあり、空き家などでお困りの方は、ぜひ日野市にご相談いただければという紹介がありました。

また、「多面的な活用の促進」では、活用マッチング制度や専門家派遣制度に加え、今年度より「まちと空き家の学校」により、空き家等活用に関する人材育成、地域と活用者の交流を育むことを目指すことが紹介されました。

③今後の空き家対策としては、令和4年3月より、対策計画(第二期)がスタート予定です。


【第2部】

続いて、「まちと空き家の学校」について、運営事務局である(株)エンパブリック広石拓司よりご紹介しました。

まちと空き家の学校説明資料(PDF)

 日野市は暮らす場所としての成熟度が高い。日野の未来の絵を描いていただくと、川から描き始める方が多い。自然も近く、交通の便もよいなどが日野市の良さ。地域の空き家も、家としてどう処理をするかだけでなく、空き家をまちの資源として考える。まちの中で必要とされているもの、例えば地域活動の拠点などを、空き家という資源を生かしてよいまちができるかを、みなさんと考えていきたい。

 まちと空き家の学校のテーマは、「まちと空き家の新しい関係を考え実践のヒントをつかもう」というもの。いろいろなつながりがもっとあればよいのにといった「まちのニーズ」と、「資源としての空き家」を組み合わせ、両方の立場から考えていくことが特徴のひとつ。

 まちと空き家の学校は、全6回、4日間の講座。講座の特徴は、「講座と実習の連動」「空き家を使う人の視点、家主の視点の両面から」「学校でのつながりから新しい可能性が!」という3点で、講座自体は限られた回数だが、話し合っていくなかで、所有者の方の理解を深めたり、活動者と所有者の方のつながりを深めることで、次の動きにつながっていくことを期待している。

 講義1では、交流の場とはどういうことかを学ぶ。実習1では空き家活用の現場を見学に行く。実際の場所を見てわいてくるイメージを大切にしたい。また活用前の空き家は掃除や準備が必要なので、そうした事例も見ていただきたい。講義2・実習2では、受講生自身のお試し企画を考え実践いただく。それをふまえ講座3・実習3で空き家活用の企画を考え、制度に登録されている所有者さんなどに発表してみる。座学よりは、自分で動いてみることが中心のプログラムとなっている。その気づきを今後の活動につなげていただきたい。

地域の活動、交流、空き家に関心のある多様な方にご参加いただきたいと考えている。単発講座ではなく全6回講座であることにご留意いただきつつ、参加申し込み、お待ちしております!